もしも未来


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時は2XXX年。


銀河系に位置する一つの惑星に生命漲る活気ある星が存在した。

その名も地球。


その地球を支配する一つの種族が居た。

その名は人間。


人間は特別な身体能力を持っている訳でもなければ何か特殊能力を見に着けている訳でもない。
野獣に襲われれば容易くその生命を散らし、過酷な環境で生きる術もない。

だがそんな弱点を帳消しに出来るほどの特殊能力を持っていた。


それは他の動物より特別賢い事。



遊牧の民として長年移住を続けていた人間が初めて定住地を作る。
人間という生き物が誕生してからある説では既に6000年も経過した今。
6000年前の人間が既に見つけた知識は不思議な事に他の生き物はまだ見つけていない。
その知識は『車輪』。重たい荷物を車輪の上に乗せる事によって少ない運動エネルギーで効率よく運ぶ事が出来るテクノロジー。

車輪に留まらす人間は農業の知識も得た。人間は自給自足が出来るようになった。
そして人間は陶器の知識も得た。収穫した穀物を長期保存できるようになった。

人間は青銅器の知識を得た。森林を切り倒し切り倒した森林から何かを作る知識を得た。
言葉を覚え、人間は秩序を作り、そして文明を築き上げた。
自らが知った事を後世に伝え教育し新たな資源を見つけは活用した。
ある偉人は神を称えた。ある偉人は経済を作った。ある偉人は物理学を発見した。ある偉人は人間の栄光を築き上げた。


古典、中世、ルネサンス、産業革命・・・そして現代。



人間はドンドン成長した。




そして人間は今・・・。








『やったぞ幸子!ついに部長へ昇りつめた!』
『まぁ、貴方素敵!』
『給料が一気に上がったからな、家族で海外旅行へ行くか!』
『パパステキ!』
『でも貴方、休みなんて取れるの?』
『あぁ・・幸子・・・俺は休みが取れそうもない・・・。』
『エー!カイガイリョコーニイキターイ!!』

「おーっと、諦める事はありません!!なんと!一瞬で海外へ行くテクノロジーがわが社で作られました!
この技術を用いれば・・・ほーら!!」

『ハッハハハハ!ハワイだぞー!』
『ウミデオヨグー!』

「夢のハワイ旅行がまさかの日帰り!?」

『真美、あれがピラミッドって言うんだぞ。』
『デカーイ』

「散歩気分でピラミッドを見に行くことだって出来ます。」

『でもお高いんでしょー?』

「いやいや、価格なんと50万!!これは安い!
まぁ今だに発展途上国に住む人には高いかもしれませんがね。」

『まぁ安い!でも場所とるんでしょー?』

「いえいえ、なんと衣装棚程度のスペースで自宅に設置する事が出来ます!
今すぐ欲しい方はリモコンの赤いボタンを押してください!30秒以内に係員がお届けにまいります!」



【シルバーコーポレーション♪】






ルイ
「今日一日で特殊ワープ装置機は1275万台売れました。特にトラブルもなく設置も出来たようですよ。」


パソコンに向きあいながら今日一日の営業成績を会長に報告する。
ガラス張りで覆われた部屋に大きな椅子に深く腰をかけ、窓から見える水平線まで続く海を眺める男が一人。


キュピル
「1275万台。少ない。」
ルイ
「キュピルさん。」
キュピル
「さんではない。・・会長だ。」
ルイ
「・・・失礼しました。キュピル会長。研究部署より新たな資源を発見したとの事です。
この資源を使用すれば新たな製品開発を始める事が出来るそうです。」
キュピル
「すぐに全て採集しろ。」
ルイ
「・・・で、ですが地球上にほんの僅かしかない資源のようでして・・」
キュピル
「資源は消費するためにある。そして我々の世代によってではないにしてもいつかはやがて消費される。
だが忘れられた未来に我々の財産権を否定する権利があるだろうか?断じてない。我々の者は我々が頂こうではないか。」

椅子を回転させルイと目を合わせる。

ルイ
「・・・わかりました。」

無音の部屋にキーボードを叩く音が木霊す。





テルミット
「もし未来の支配者に支配者である事よりよい生活をみつけてやれたらよい政治が行われる国家が可能となります。
なぜならそうした国家においてのみ真の豊かに人間が支配者になるからです。
黄金を沢山もつ物ではなく幸福を生みだす美徳と知恵に富んだ者。では支配者である事よりよい生活とは何か?」

キーンコーンカーンコーン

テルミット
「・・・おやおや、もう時間のようですね。では今の疑問を課題にすることにします。
来週末までにレポートとしてまとめてきて私に提出してください。では解散。」



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琶月
「あーーーー!!支配者である事より良い生活って何なんですかーー!!」
輝月
「ええい、黙れ琶月!ワシも今必死に考えておる所じゃ!」
ロビソン
「おいおい、輝月が分らないんじゃこれはもう一生分らない問題じゃないのか・・・?」
輝月
「お主、それはどういう意味じゃ・・・。」
ロビソン
「輝月、君は琶月を支配しているだろう?つまり君は支配者な訳だ。」



ロビソン
「的を得た発言だからといって竹刀を振るうのは女としてよくないと思うんだ。」
輝月
「ワシはただ目の前に居った案山子を叩いたまでじゃ。」
ロビソン
「全然意味が分らないね。」
琶月
「師匠、そろそろ部活の時間ですよ。」
輝月
「うぬ、参ろうか。」
琶月
「・・・あー!そうだー!今日噂の特殊ワープ装置機の発売日だったー!
師匠、私それ買いたいので帰ってもいいですか?」
輝月
「帰っても良いが明日からお主の居場所はないぞ?」
琶月
「大変失礼しました。」




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ファン
「科学の進歩には二種類あります。まず徐々に知識の限界を広げて行く系統だった実験と分類。
もう一つはそうした限界を再定義し越えて行くような優れた才能と革命の飛躍です。
前者には多大の恩恵を被っているのは事実ですが我々は確かに後者に憧れを抱いています。」

『教授、今回発明した特殊ワープ装置機は両者どちらによる物なんですか?』

ファン
「科学理論の是非はそれは普段の経験と合致しているか否か。単純明快か否かで判断されます。
天空の大いなる原則が真理を前に崩れ去ろうとしているかのように私は見えました。」

『・・・えーっと、それはつまり・・・どちらで?』

ティル
「ファン教授。キュピル会長から指令が降り新たな資源採集に着手し始めたようです。」
ファン
「既にサンプルは届きましたか?」
ティル
「はい、ここに。・・・ですが、私にはこれがただの砂にしか見えませんけど・・。これが一体何に使えるのですか?」
ファン
「テクノロジーの進歩というのは本来繰り返しのプロセスです。
浜辺から砂をとってくるだけでデータ観測装置がが出来る訳ではありません。
幼稚な道具を使ってより優れた道具を作りそれを使って更に精密な道具を作っていく、その繰り返しです。
ちょっとした改善の一つ一つが進歩のプロセスのワンステップであり全てのステップを順に踏んでいく必要があります。
今はただの砂にしか見せませんが、これがいずれ新たな革新的な道具を作る最初の資源なのです。」



『新たな資源が見つかったのですか?その資源でまた新たなテクノロジーを作るのですか!?』





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シルク
「テレビでまた面白い事やってんぞ。」
ヘル
「ああ分っている。技術者がくどくど何言っているかは誰だって耳にしている。
テクノロジーは美しいだの神聖だのとか言ってんだろ。だが俺から言わせてもらえばこんなテクノロジーはちっとも
美しくないし素晴らしい物でもない。むしろ用心していないととんでもない恐ろしい目に遭うぞ。」
シルク
「それは哲学か?」
ヘル
「今に分る。こんな世界なんかな。」





学生
「質問ですが会社ではどのようなことをされているのですか?」
ディバン
「色々やっているから一言ではまとめられないな。もっと具体的に言え。」
学生2
「・・・数百年ほど前と比べて科学テクノロジーは大幅に進歩しました。
しかしシルバーコーポレーションによって化学だけでなくコンピュータープログラムにも革命的なアルゴリズムが
作られたと思います。しかし会社ではどのようなプログラムが組まれているのか私たち学生は知りません。
会社では一体何をやっているのですか?新しい科学を発見するための手助けとなる特定の作業を行うプログラムを作り続けているのですか?」
ディバン
「俺等はもう特定の作業を実行するソフトウェアを書くような仕事はやっていない。
今ではソフトウェアに学ぶ事を教えている。最初の結合プロセスでやるべく作業に合わせて形を変えさせているんだ。
フィードバックループは殆ど永久に続くから10年後の多重近くにはとてつもなく価値のある物になっているかもしれないし
いかれて滅茶苦茶な物になっているかもしれない。でもとにかく初期の結合は子供時代とよんでもいいがそれが最も大きな影響を及ぼす。」





ファン
「・・・おや。」
キュピル
「新しい資源はどのような物が作れる?」
ファン
「これまでの常識を覆す物が作れる事でしょう。」
キュピル
「なら良い。」
ファン
「今日発売した特殊ワープ装置機は全てトラブルなく設置できたようですね。
報告によればサイズが小さい事も要因の一つだったみたいですが。・・・僕は驚きましたよ。
まず初めにこの装置を作った後は売りに出すのではなく小さくしろと言ってきたのですから。」
キュピル
「かつてメートル単位ではかられていた物体が革新的な技術によって、全て裸眼では見えない程小さくなった。
ファン。女性達の言葉は忘れるがよい。サイズなんで問題じゃないなんてのはまやかしだ。・・・サイズは重要だ。」






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キュー
「・・・ん?・・・おー!おかえりーだぜー。」
キュピル
「ただいま。」
ルイ
「ただいまーキュー良い子にしてた?」

ルイがキューと同じ目線になるまで屈む。そして頭を撫でようとしたが無視されキューはキュピルの元まで駆け寄る。

キュー
「テレビみたぜー、にひひ。お父さんまた凄い物作ったなー!
あー、そうそうさっきなー。中止、リトライ、失敗。どこかのホーム野郎がそう落書きしていったぜ。
玄関ドアの横にね。だから新しいデータスキナーが動きだして巨大な有機コンピューターに
自分達の世界を作るために言っておいてやったぜ。もしこのメッセージを見たら常にリトライを選べってね。」
ルイ
「・・・・・・・。」

・・・この二人は異常だ。





ギーン
「新たな資源を全て採集するのであれば該当国との戦争は避けられん。」
ファン
「・・・・。」
ギーン
「諦めるか?」
ルルア
「戦争は戦争、破壊は破壊。そんなの当たり前だと思っているんでしょ?でも戦争は破壊じゃない。
勝利よ。勝利を手にするのは簡単。敵が望む物のをあげるふりをすればいいの。
そうすれば敵は帰ってくか、あるいは仲間になってこっちの求めに応じてもっと力を貸してくれる。どう?簡単でしょ?」
ギーン
「ふん。では該当国が欲しがる物とは何だ?もし要求を飲めない様な物を突きつけてきたらどうする気だ?」
ルルア
「あら、貴方にしては珍しい事言うのね。別に要求なんて飲む必要はないのよ?だってあげるふりをすればいいもの。」







「地球のディアドラよ。貴方がたは孤独です。貴方方のふる里は若くして既に永遠の死を迎えようとしています
なのに今宇宙は必死に貴方方に教えようとした教訓を無視して私達の何百万回も日が沈むのを眺めてきた空を炎と飛行機雲で埋め尽そうとしています。貴方方人間はのうのうとした世界に命を吹き込もうとしているのですか?それとも貴方方人間は消し去ってしまうべき油断のならないガンなのですか?」





西暦2XXX年。シルバーコーポレーションはまた新しいテクノロジーを発見した。
だがそれらのテクノロジーは公開される事はなかった。

そして新しいテクノロジーの発見の翌年。突如シルバーコーポレーションが跡形もなく消えた。

シルバーコーポレーションが消えてから更に翌年。地球は割れた卵の殻のように真っ二つに割れた。


シルバーコーポレーションが最後に開発したテクノロジーとは。


惑星間ワープ装置機。


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